
覇王伝アッティラ【完全版】 [DVD]
時代は五世紀の初頭、中欧から東欧にかけての広大な土地を治めたフン族の王の物語。王の名前はアッティラという。彼はとにかく戦に強く、そして敵対する者に容赦をしなかったので、多くの人から悪魔のように恐れられていた。
王を演じたジェラルド・バトラーはスコットランド出身の俳優で、「300」でも似たような役を与えられていたが、たくましい肉体と精悍な顔付きの中にどこか知性を漂わせていて、女性だけでなく男性からも人気があるようだ。そんな人物だから、作品の中で出てくる数々の恋のシーンは、とても絵になる。赤い毛を持つ女性が好み(これはガリア人の特徴だ)という設定は、初めから終わりまで物語とリンクし、王を突き動かす原動力となっている。
また色々な戦闘や政治的な出来事の描写がテンポよく並べられているので、この時代に詳しくない人でも――それが普通だろうが――気軽に見ることができるのではないだろうか。
唯一残念な点は三時間に及ぶ二枚組の大作が、最初から最後まで真面目に語られ過ぎることだ。テンポが良いとはいっても、ポンポン進むというのではなくて、淡々とストーリーが進行していく感じが否めず、観客は少し飽きてしまうかもしれない。私は正直飽きてしまった。だが今まであまり取り上げられなかった時代と人物の造形に挑戦したという点で、この作品は十分な評価を得るに値する。行軍の途中で退屈さを感じるのも、大作を見る時の「味」だと思ってしまえばそれほど苦にもならないだろう。