DS図書館 世界名作&推理小説&怪談&文学
懐かしい本を読みたいけれど、買うとなると…。と悩む時に良いソフトだと思います。書体が選べるのは、ジャンルによって使い分けられ、気分も変えれる為気に入っています。自動しおりも、急に中止しなくてはいけない場合に便利です。
ただ、左画面の文字が、薄く見にくい感じは否めません。
3000円代のソフトに120以上の作品が、和洋で入っているのは、とても気に入りました。
夏目漱石のこころ(新潮文庫連動DVD)
高校生の頃、国語の教科書に一部分が採用され、なぜか引き込まれたのが原作との出会い。
その後、昭和63年の暮れに深夜のTVで「それから」と一緒に放送されたのが、この映画との
出会いでした。既にその頃には原作を完読していましたが、かなり忠実に映像化されて
いたのが印象的でした。イメージが壊れなくてよかったな、と。市川崑監督って、「金田一
シリーズ」では原作と犯人を変えてたりしますから…。
原作との大きな違いといえば、小説では一人称である「私」が、「日置」、「K」が「梶」、
「奥さん」が「静」と、それぞれ名前が付けられているくらいでしょうか。これは映像化
する上ではやむを得なかったのでしょうね。
ですので、活字が苦手で小説の代わりに手っ取り早くこのDVDを観ても大きな勘違いはないと
思います。
上記のとおり市川崑監督による作品ですが、昭和30年公開のモノクロ作品ということで、
後のスタイリッシュな映像美はまだほとんど観られません。が、日本家屋の屋根を俯瞰した
ショットなど、どこかで観たシーンがこの時点で既に観られるのも一興です。
また、明治の東京をそれらしく再現している美術も素晴らしいです。
キャストでは、「奥さん」を演じる新珠三千代さんの憂いを帯びた美しい表情が印象に
残ります。回想シーンでは快活なお嬢さんを可愛く演じているので、夫の「こころ」を
分かれずに静かに苦悩する現在の悲しみが一層重く伝わります。それでもかすかに艶めく
空気を漂わせているのが凄いです。こんな女優さん、今いませんね。
もちろん、当時絶好調だったと言われる森雅之さん、朴訥な三橋達也さんもそれぞれの
やり方で苦悩を演じきった印象があります。
なんにせよ、大変重苦しい映画です。原作がそうなので仕方ないことですから、それを承知で
観る映画だと思います。
原作も映画も古いですが、底辺に流れる精神性はちっとも古びていません。時代は変わっても、
人が人を想うこころ、それに伴って生まれる嫉妬心、猜疑心などは何も変わらないのですね。
この映画が残す重い余韻は、明治(原作の舞台)・大正(原作の出版)・昭和(映画の製作)・
平成(DVDの発売)という時代を超えて、そのことを静かに訴え続けています。
草枕(英文版)―The Three-Cornred World (タトルクラシックス )
漱石の「草枕」の英訳です。草枕を The Grass Pillow と直訳したのでは、旅という含意が English readers には伝わらない。題名は本文中の文句「三角のうちに住むのを芸術家と呼んでよかろう」から取ったものです。本書を買った理由は、冒頭の有名な「知に働けば角が立つ。情に棹させば流される」に始まる一章が英語でどう表現されているかを見たかったから。さすがにターニー先生、巧みに処理しています。それにしても、漱石は難しい漢字や漢詩や理屈が多い。英訳のほうがかえってわかりやすい。原作とターニーの英訳を読み比べると、難解な日本語も自然な英語で表現できることがよくわかり、たいへん勉強になりました。
パーソナリティ障害―いかに接し、どう克服するか (PHP新書)
本書は境界性パーソナリティーについて具体例を挙げて分かりやすく記述されていました。
少なくとも医師国家試験レベルの精神科の教科書では、境界性パーソナリティーの分類はなされていて、それらを表面的には学べます。
しかし、そういう教科書には境界性パーソナリティーの人たちに対する「優しさ」が感じられません。
本書の筆者は哲学の道に一旦進まれた後で、医学部に再入学し、精神科医となった方です。
一度哲学を学ばれた影響かもしれませんが、筆者の描写には「優しさ」を感じることが出来、とても好感が持てました。
「自分の人格が原因で引き起こされる困難に正面から挑んで克服した人間は、魅力溢れる人間である」という筆者の言葉に深く感動しました。
性格の偏りから生まれる悲劇を根絶し、性格の偏りによってもたらされる喜びを得る。
本書を読むことでその一助としていただければと思います。