時を巡る肖像 (実業之日本社文庫)
絵画修復師、御倉瞬介を探偵役にした連作短編集です。
この物語は、瞬介の亡き妻シモーヌの思い出や、忘れ形見の七歳の息子圭介の存在、男性家政婦加護との生活など、風俗部分の描写に重点が置かれている気がします。
ただ、そのために「瞬介」が主役になった文章になっていて、探偵自身の心のもろさや、自信の無さもそのまま描かれているので、そのぶん、
探偵の迫力は弱まってしまうのじゃないかな、という気がしました。
この本の謎の解決は、この作家にしては全体に地味な印象を与えますが、「絵画」という題材にうまく連動していると思います。
シモーヌという女性の人物像が主題になった物語や、圭介少年の母親への気持ちのエピソードなどは、この本には入っていません。
そのため、「この物語はこの本ではまだ完結していない。」という印象を受けました。
この実業之日本社文庫には、作者あとがきや、解説文などがはいっていません。私はそういうものを文庫の楽しみにしているので、それがちょっとさびしい気がしました。
殺意は幽霊館から―天才・龍之介がゆく! (祥伝社文庫)
御値段も手ごろで,それ程ボリュームもないし,手軽にサクッと読むのにはちょうど良い作品です。ちょっとした推理クイズのような感覚で楽しむには良いかも。この作者の作品ですから,一応水準はクリアしてるとは思いますが。ページ数がページ数ですから,あくまでもそれなりだと思います。