情事 ランキング!

情事 情事 (集英社文庫)

山田詠美や吉本ばななが流行った18年前、10代の頃森遙子の文章に出会った。 『 私は知らない事は書けない』と言った彼女の作品群は確かに彼女自身が色濃く投影されている感じがする。外国文学のようで、下品な感じがせず、どことなく音楽的で美しい文章だ。 作家との相性は文体なのかもしれないが、私は森遙子以上嵌る作家にはもう逢えないと思う。 情事 (集英社文庫) 関連情報

情事 情事の終り (新潮文庫)

愛は面倒くさい。愛した側は、何とかこの強い気持ちが現実のものだと理解されたいと願う。例え相手から同じように愛されたとしても、素直にそれを信じることができなかったりもする。作中、愛を知った男は自信を失い、心のうちに芽生えた強い感情をただ悶々とこねまわす。女は女で、偶然の向こうに何者かの意思を感じ、敬い尊ぶ。幸せになれたかも知れない機会を逃した後に、人はどう現実と折り合いをつけるのか、グリーンは、そんな人間の情けなさと強さを優しく書くことが巧みな作家なのだと思う。別れた後、数年を経てから相手の女の手記を読んだ男が、自分が愛されていたことを知り戸惑う、そこになんとも言えない悲しさを感じた。こんな悲しさをじっくりと読ませてくれ、読語に豊かな気持ちにさせてくれる作品はそうないと思う。 情事の終り (新潮文庫) 関連情報