大江戸リサイクル事情 (講談社文庫)
過去2.3年の太陽エネルギーだけで全てが事足りていた世界。
それが江戸時代である。この表現はとても面白い。
江戸時代には本当の意味でのゴミは何一つなく、全てが再利用される社会。現在は3R(リサイクル・リユース・リデュース)が叫ばれているが、江戸時代はなにもスローガンを叫ばなくともそれらは実行されていた。それは資源が少なかったこともあるが、全てが商売になったからである。なかなか意味深である。聖人君子でない我々はやはりただで不便や苦労を選びはしない。
このシリーズはいくつか読んだが、著者の取材力や構成力は認めるが、いまひとつ姿勢に賛同出来ない部分がある。変に斜に構えて現代文明を批評する態度である。著者が考えるようにかつての日本は不便でどうしようもない暗黒世界であった、現代文明・西洋文明万歳といったようなステレオタイプの思考は殆ど存在しないであろう。西洋文明の代わりに江戸のリサイクル文明を御輿に担いでいるだけで、ひとつの尺度から他を測ろうとする態度は結局は著者が批判したがっている(批判したつもりでいる)人々の思考態度と何ら変わりのないものに見えてくるからである。
江戸・キューバに学ぶ“真”の持続型社会 (B&Tブックス)
大量消費と大量廃棄の時代は終焉を迎えつつある。向かう先は、資源により制約される持続型の社会である。再生可能な植物に資材・原料の基礎を置く社会でもある。
その具体例として、かつての江戸時代と現在のキューバを研究した。これらは少し視点を変えれば、人とマンパワーを大切にするゆっくりとした満足度の高い社会でもあるようだ。
現在、この流れに沿う「新しい企業」の動向も示している。現在の文明の異常さを気づかせてくれる本でもある。