大人の流儀
そもそも読後の感想をここに投稿すること自体が
『大人の流儀』を読み込んだのか?と
お叱りを受けるような無粋と知りつつ
少し考えを述べさせていただく。
週刊誌に掲載した文章が時間を置いて読んでも色あせていないことが
伊集院さんの魅力をあらためて教えてくれると思う。
相手との距離の置き方や、自分自身との向き合い方などでは
本文のエピソードを通じていろいろなヒントを教えてくれるが、
結局は「自分の生き方を決めるのは自分なのだよ」と
諭されているような気がした。
山口瞳さんの『礼儀作法入門』や
池波正太郎さんの『男の作法』が好きな方であれば
本書を読んでいて、心の波長が比較的合うのではないか?
もっとも、あれこれ作法を講釈するような本ではない。
手にしやすい語り口調、価格設定、サイズでもある。
日ごろは伊集院さんの文を読んだことがないという方が
本書を買い求めて新幹線に飛び乗るような感覚で
軽く手にして、軽く読むのも良い出会い方の一つであろう。
Belle~カネボウ・ヒット・ソングス
以前に発売された「beautiful~彩美曲」と重複する曲も多いのですが、ずっとカネボウを愛用している者としてはやはり買わずには
いられませんでした。
特に「Rock’n Rouge」と「ワインカラーのときめき」は大好きな曲だったので、聴く事ができて嬉しいですね。
さらに、「夢・恋・人」は元キャンディーズの藤村美樹のソロでちょっとマニアック。このキャンペーンの時の商品(ブランド名は「アバ」で
アイシャドウと口紅)はいまだ手元に残っていたりします。
星5つにしなかったのは、今度こそ聴きたかった「ギンザレッド・ウィウィ」が収録されていなかったから。
それ以外は満点に近い内容でしょう。
昨今は経営不振にあえぐカネボウですが、かつての「黄金時代」を担った消費者の一人として、あの頃の輝きを取り戻して欲しい、
そう願ってやみません。
このアルバムがそのきっかけにでもなればいいな、と思います。
がんばれカネボウ!!
いねむり先生
伊集院静氏36才。2年前に妻で女優の夏目雅子を失い、人生の蹉跌にも置かれていた同氏へ「ぜひ一度、逢わせたき人がいます」との先輩Kの計らいから『いねむり先生』との約2年間のストーリーが編まれる事になる。これはその半ドキュメント作品だ(フィクション部分もある)
伊集院静氏は現在仙台在住で、この度の震災でも著者自ら被災し、それに関してのメッセージもメディアへ寄せてはいるが、敢えてこの作品と無理に関連付ける必要はなかろう。
色川武夫氏が夭逝したのは平成元年であったのが、私個人はこれを象徴的に感じている。昭和は混沌こそが日本にパワーを与えていた時代であって、正邪や白黒をつけず、また問わず(それを問う余裕もなかった)それぞれの人間が、まだあるがままを生きてゆけた時代だ。このせんせいはまさに、ピカレスクを背負いながらも、混沌とし退廃的な世界を平気で行き来できる無垢な天童であった。
この作品ではそんなせんせい=彼の奔放な魅力を伊集院静=サブローの視点から存分に押さえてゆく。そこにはせんせいを、あるがままに愛し、受け容れる人々が溢れ、ある時は礼に欠き、またあるものは独占しようと、決して良い人々ばかりではないが、周囲の心配をよそにせんせいは、それをたやすく受け止めてゆく。
せんせいが好む世界は博奕(競馬、競輪、麻雀、花札)演芸、角力、ジャズ、グルメと多彩で、その当時、周囲に都度勧められはするが、小説家になる事など、自己の才がないとはねつけていたサブローにとって、視るもの聴くもの出会うものが彼の内面にかすかな変化を与えてゆく。
前述の通り、この二人の出会いはK氏に拠るのであるが、これ以上なきほど見事な出逢いとあると思う。喜びを感じる部分が近いので、二人は同じところで同じ事で愉しむことが出来たのだから。結局主人公のサブローはそれが故に、救われてゆく。せんせい以外ではそれはかなわなかったはずだ。
せんせい、と言っても何かを教えようとした訳ではないし、実際文中でも具体的に何かを教わった記述はない。ただ「感じるまま」が描かれ、「敬愛」のうちの「愛」が勝る様子が読み手に伝わってくる。
平成の時代になり、現在では日本経済が落ち込むや国民は他者へヒステリックになる一方で、善悪をとかくつけたがり、喫煙さえ悪、ギャンブルなどとんでもない風潮ーー人間の潤滑油さえ奪われかねないーー心はササクレ立つばかり。まるで社会主義国のようになってしまった。こんな時代にはこのせんせいは存在することが出来なかっただろう。読者はきっとこの作品から、今の時代に欠けたもの、失ってはならない大切なモノを見出すかもしれない。
しかし今の時代、国民一人一人こそがサブローを苦しめる『不吉な幌馬車の幻覚』を見ているかもしれないのだ。
私は『麻雀放浪記』の坊や哲と=その引用元と思わせる、色川武大が愛した芸人の坊屋三郎をかけ、主人公名をサブローにしたのだろうかーー作者はそんな心の交流を『亡き師』に対して密かに試みようとしているのか?ーーなどと私は勝手な想像をしたりしている(オモイスゴシカモシレマセン)
1985年に私は、知己の漫才師に連れられ今は無き四ッ谷のバー『ホワイト』で色川武大本人に会った事がある。このバーでは内田裕也、高橋判明などあくの強い業界人が夜な夜な集い、常に派手なケンカや何かと話題の尽きない、やはりその頃にしか存在し得ないような有名なバーであったが、この作品を読み、その時期は引っ越しの多かった色川武大が店の付近の、新宿大京町ー左門町在住の時期であったのだとわかった。そのときもあの大きな目をギョロつかせながらカウンターで彼は笑顔ではにかんでいた。
この作品では敢えて触れていないが、色川武大の死を機に、同年(1989年)から『小説家伊集院静』の歩みを決心した事実は無粋ながら記させて戴く。
瀬戸内少年野球団 [VHS]
夏目雅子の清冽な美しさが光り輝く。
戦後の混乱の中、強く逞しく強かに、人々は生き続ける。
夏目雅子
郷ひろみ
伊丹十三
岩下志麻
山内圭哉
佐倉しおり
大森嘉之
大滝秀治
加藤治子
渡辺謙
ちあきなおみ
島田紳助
内藤武敏
名優達の個性溢れる熱演は素晴しい。
ストーリー展開の巧みさ、ダイナミックさは絶品。
日本映画の金字塔と評価すべき傑作。