LIVE AT OPEN THEATRE EAST 1993 & CONCERT 96 [DVD]
1993年7月25日、よみうりランド・オープンシアター・イーストでのライヴを収録。DVDを観ると分かるが当日は雨で、ピアノ・ベース・ドラムの上には雨よけの透明のテントが張られ、観客はほとんど全員がカッパを着ての野外ライヴという極めて珍しい状況での収録になっている。
そんな珍しい状況でのライヴを3人、特にキース・ジャレットは楽しんでいる。ビックリするくらい何度もアンコールに応えたり、曲の合間に呑む水の入れ物に雨を入れてみせる仕草をしたりと、実に楽しそう。当然演奏の方も絶好調で最後に行くほど素晴らしい。
彼等の演奏する様はまるで音楽を食べているかのようだ。苦いなー、という顔をしながらドラムをさばくディジョネットや、キースのピアノになるほど次はこうくるか、という美味しそうな顔をするピーコック。トップサイダーとおぼしきスニーカーで小刻みにペダルを踏み、蠢くキース。どれもなかなかいい。DVD故に音もCDよりずっと良く、ライヴはもうこれから全部DVDで出して欲しいな、と思わせる演奏だ。
めったに観られない雨の中のスタンダーズ。必見です。
The Melody At Night, With You
同じ曲調、同じテンポ、それなのにインクを吸い取る紙のごとく最後まで心に滲みて来る。
こんなアルバムは他に知りません。
実際上は休譜になるんでしょうか音と音を繋ぐ間、
無音や静寂もひとつのサウンドかなと。
それが聴こえて来るようです。
マーサの幸せレシピ [DVD]
ハリウッドの起承転結のはっきりした、メリハリの効いた演出に慣れている人にとっては、多少もどかしく感じるかもしれません。
でも、この作品はいいですね。
最近のドイツ映画は世界大戦前後を描いたものを中心に見ていたので、こういう現代の日常を描いた作品は久しぶりでした。
これがまたいいんですよねぇ。
リメイクされたほうは観ていませんが、しみじみと心に余韻を残してくれるいい映画です。
厨房がなんともカッコよく見えるし。
主人公と子供、脇役もみんないい。
徐々に笑顔が見られるようになってゆく様はこちらも嬉しくて笑顔と元気をもらいました。
Jasmine
この音楽にワインは駄目だ。
絶対にウイスキーじゃないと駄目だ。
少しピート香の効いたスモーキーなヤツ。
10年は樽で熟成されてタンニンが染み出して少し渋みを含んだ綺麗な琥珀色の芸術。
なんて調子良く筆をすすめてみても、
実はその手に握られてるのは大五郎だったりする。
この音楽は大五郎をマッカラン18年に錯覚させてしまうくらいの芳醇な香りの琥珀色の音と言える。
音数はすごく控えめで
その”間”に人生の渋みが溶け込んだよう。
自分はこれを妻と聴けない。
一言も交わさず、息をひそめて聴き込んでしまう。
キースのデュオって他に記憶がない。
一方ヘイデンはといえばデュオのマエストロだと認識してる。
ピアノだけでもケニー=バロン、ゴンサロ=ルバルカバ、ハンク=ジョーンズ, デニー=ザイトリン。
他にもメセニーとのデュオもある。ギターのエグベルト・ジスモンチとのライブ盤もある。
それらはどれも例外なくすばらしく暖かさに満ちたもので愛聴盤となっている。
ヘイデンがピーコックでも作品の内容にたいした変わりは無かっただろうと言う評者もいますが、
ピーコックではこうはいかなかったと思います。
彼とでは丁々発止のプレイを期待してしまう。
それはそれですばらしいモノになったとも思います。
しかしヘイデンは過去のデュオ作から内圧の圧力を圧として引き出すよりも
もっとナチュラルで柔らかい部分を引き出してくると思うんです。
自分はバリバリのインタープレイをここには一切期待などしていなかった。
しかし予想以上にここではとろけるぐらいの仕上がりを聴かせてくれた。
キースとヘイデンのここでの対話は張りつめるような緊張感は支配してない。
この音楽を作り上げる喜びに満ちてる。
ヘイデンがキースにお帰りと言っているようだと言えば感傷的に過ぎるか。
でもキースのピアノには喜びが舞っている。
そこがヘイデンの凄さだと思いますしキースのランドマークの一つになると思うんです。
確かにエポックメイキングな問題作でない。
でも音の間に人生が溶け込んだような音楽もまたジャズとして一つのあるべき姿だ。
音楽家がふと音楽に立ち返った時にこの音楽が鳴っているとすれば、
それはジャズの奥深さを鳴らしているのと同義語だと思うんです。
まずは一人で耳を傾け最愛の人に勧めたくなるアルバムであるのは間違いないと思います。
東京ソロ 1984/87 [DVD]
他の方のレビューにあるとおり、パッケージの扱いにくさ、字が小さいことからくる読みにくさは、商品としてマイナスポイントでしょう。
しかし、キース・ジャレットのふたつのピアノ・ソロ・コンサート(1984年1月25日、東京・五反田の簡易保険ホールのライヴと、1987年4月14日、東京・サントリー・ホールのライヴ)を映像で見ることができる喜び、スリリングな楽しみは、やはり得がたいものがあります。
私は今回はじめて、この2枚組DVDによってキース・ジャレットの演奏する姿に接しましたが、演奏中、興が乗った時のキースに「創造の神が舞い降りる」雰囲気が感じられて、わくわくしました。とりわけ、『Last Solo』と題された1枚目のトラック4「東京’84 アンコール」の演奏が素晴らしく、まっさらなキャンバスに音楽を書きつけていくキースの恍惚とした姿に、身震いするほどの感動を覚えました。
14の小品、メロディーをちりばめた2枚目の『Solo Tribute』も見どころが多く、堪能させられましたね。音楽の色んな引き出しを持っていて、それを自在に出し入れし、使い分けることのできるキースの才能にふれることができて。このなかでは特に、マイルス・デイヴィス作曲の「ソーラー」、ラス・フリーマン(?)の「ザ・ウインド」の演奏がよかった。
収録されたふたつのライヴ演奏ともCD化されておらず、映像のみの発売となっているようです。商品パッケージは扱いづらく、見づらく、問題ありですが、キース・ジャレットのピアノ・ソロがお好きな方でそのライヴ公演に接したことのない私のような聴き手にとって、これは十分魅力的な映像であり、買った甲斐がありました。