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マルセル・モイーズ マルセル・モイーズの芸術

 バッハとモーツァルトについては他の盤でレビューを書いたので繰り返さない。ここではドビュッシーの「フルート、ハープ、ビオラのためのソナタ」について触れておきたい。 この曲はほとんどまともな演奏がない。その理由は明白で、楽器の組み合わせにそれぞれ名プレイーヤーを当てることがむずかしいからである。この録音のビオラについてはよく知らないが、ハープは全盛期のリリー・ラスキーヌであり、それだけでも名演奏が予感される。そして、もちろんのことながらその期待を裏切らない名演奏がここで聴かれる。この曲は楽器間での旋律の交換が演奏の要であり、すぐれたテンポ感覚と鋭い和音感覚が求められる。モイーズは単に美音で知られていただけではなく、曲想に応じた抜群のリズム感覚を持っていたから、その長所がこの曲で十分に発揮されていると言えるだろう。 録音の古さを十分に補って、このドビュッシーの名作の中で第一に指を屈しなければならない名演奏である。ひょっとしたら、この演奏を超えるものは二度と生まれないのではないか。 マルセル・モイーズの芸術 関連情報